0021/08/11

経済対策としての医療IT

依然世界経済の見通しは不透明ながら、少し前までのマスコミの悲愴な報道姿勢から、打って変わって、回復の兆しが見られる、最悪の時期は脱したという、楽観的な論調が出てきているようです。

しかし、日本のバブル崩壊をリアルタイムで経験した世代としては、これは要注意という気がしてなりません。日本もアメリカも、新たに多額の借金を背負ってまで、巨大な経済刺激策を実施した後となっては、これが効果があって欲しいとみんなが信じたがっているのが今の状況だと思います。

回復の兆しと言われているものも、これまでバブルを支えてきた産業の落ち込みを公金をつぎ込んでやっと支えているものに過ぎません。住宅価格も自動車販売もいつまでも支えられるものではないでしょう。

この時間稼ぎの間に、バブルではない本当に次の時代の経済を支えていく柱が出てこなければなりません。世界的にITや環境技術が、次の柱だと目されているようです。また、経済の混乱に伴う社会不安の解消のために、セーフティーネットの強化をはじめとする福祉の充実も叫ばれています。

とすると、医療ITにも、焦点が当たるのは自然な成りゆきだと思います。

こういうと、ITに限らず、医療福祉は富を生む産業ではないので、そこに投資しても経済成長は生まないという反論があると思います。

これまで医療分野でITが大々的に使われてこなかったのは、医療分野の特異性や人の命に関わる重大性に対して、これまでのITがいささか力不足であったことは否めません。また、特に日本では専門のIT要員を配置できないこともあって、ただでさえ不足している現場の医療スタッフの手を煩らわせられなかったということもあると思います。

しかし、本来は、医療はITの非常に高度な応用の求められる分野です。また脳医学などには直接ITの発展に寄与する可能性の高い要素が少なくありません。

したがって医療自体が経済成長を生まなくとも(もっとも日本の場合は国力に比して医療費が安く、その抑止政策の見直しだけでも経済効果は大きいと言われますが)そこで磨かれたIT技術からのスピンオフとして、新たな産業が生まれてくることに期待できるのではないでしょうか。

ただ、そのためには、単に現行の医療システムをIT化するのではなく、ITを利用することで可能となるあるべき医療の姿を前提とした、システムの変革や政策が必要不可欠となるでしょう。