日本における新型インフルエンザの騒動は、WHOのパンデミック宣言以降、逆に沈静化してしまったように見えます。
それまでは、これまで存在しなかったウィルスであるとして、感染の可能性のある例については、全例PCR検査を行ったうえでその結果が公表され、さらに陽性と判定されれば感染経路の把握に努めていたのに対し、基本的に季節性インフルエンザと同等の対処ということで、すでにPCR検査も感染経路の把握も全例には行われなくなってきていることとも関係していると思います。
しかし、今回はたまたま毒性がそれほど強くなかったのでよかったのですが、今後ウィルスが変異して強毒化することや、そもそも恐れられていた鳥インフルエンザがヒト=ヒト感染を起こす可能性がなくなったわけではないことには注意が必要です。
そう考えると、今回の新型インフルエンザの蔓延は、今後のパンデミックを予測する上で貴重な情報を与えてくれるはずです。その情報収集及び分析に当たっては、当然医療ITの果たす役割も小さくありません。
今回、米国が鳥インフルエンザのパンデミックに備えて整備していた医療ITを活用した観測網が、どれだけ実際に役に立ったかは、今後の研究発表を待たねばなりませんが、日本では、季節性インフルエンザの観測網と情報網が今回の新型インフルエンザの動向把握にどれだけ役に立ったかを検証する必要があるでしょう。
問題は、このような観測網は、ことが起こってから整備することは不可能なので、平時から通常診療に自然に組み込まれている必要があることです。
また発生後の分析では、発生が認識される前の記録では、その事態が意識されないで記録されていますから、そこから発生が認識される前の時点のデータから有用な情報を抽出することを可能とするには、情報の記録方法に工夫が必要です。
電子カルテの普及においては、このような観点も考慮する必要があると思います。